今回ご紹介する映画は、2017年に公開されたイランとフランスの合作映画「セールスマン」です。
ひっきー
凛子
それでは本作について詳しくご紹介します!
作品情報
あらすじ
夫婦で小さな劇団に所属するエマッドとラナ。
上演を目前に控えたアーサー・ミラー原作舞台“セールスマンの死”の稽古で忙しいさなかに、自宅アパートに倒壊の危険が生じて立ち退きを余儀なくされる。
2人は友人に物件を紹介してもらい、まだ前に住んでいた女の荷物が残る部屋に慌ただしく引っ越す。
それから間もなく、ひとりでシャワーを浴びていたラナが何者かに襲われ、頭部を負傷する事件が起きる。
以来、心に深い傷を負ったラナは精神的に不安定になってしまう。
一方、犯人を捕まえるために警察に通報しようとしていたエマッドは、表沙汰にしたくないラナの頑なな抵抗に遭い、苛立ちを募らせるが…。
(出典:http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=359491)
キャスト・監督
監督:アスガー・ファルハディ
エマッド:シャハブ・ホセイニ
ラナ:タラネ・アリドゥスティ
ババク:ババク・カリミ
サナム:ミナ・サダティ
(出典:http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=359491)
ネタバレ感想
高校で国語教師をしているエマッドは、妻のラナとアパートで2人暮らしをしていました。
ある日、住んでいるアパートが崩壊し始めて、訳も分からず避難。
どうやらアパート付近で住宅開発による無茶な工事が行われていたため、住んでいたアパートに影響したようです。
アパートは今後住み続けるのが困難なほど半壊したため、どこかに引っ越す必要が出てきます。
舞台役者でもあるエマッドとラナは、舞台仲間のババクから物件を紹介され、すぐにその物件に住むことに決定。
しかし、前の住人の荷物が一部の部屋に残っていました。
仕方なく前の住民の荷物を外に出して、新居での生活が始まります。
いつものように舞台稽古を終えたエマッドとラナ。
エマッドは用事があったため、ラナは先に帰宅してシャワーの準備。
お風呂場に入ろうとした直前に、ドアのチャイムが鳴ります。
夫が帰ってきたと思ったラナは、確認もせずにロックを解除。
そのままシャワーを浴び始めます。
一方、エマッドは買い物をして帰宅すると、ドアチャイムの応答がなく隣人にドアを開けてもらい階段を上がっていきます。
すると、不審な血痕が階段に落ちており急いで家に駆け込みます。
お風呂場には血溜まりが残っていました。
近所の人に事情を聞き、病院に着くと頭から血を流したラナの姿がありました。
隣人たちの話から前の住人が娼婦だったことを知ったエマッド。
自宅に戻ると、侵入者の携帯と車の鍵とお金を発見。
しかし、携帯はすでに解約されていました。
アパート近くに停めてある車に鍵を当てはめていくと、白いトラックの鍵穴にはまりました。
エマッドは、それを証拠品として別の場所に移動させます。
自分のミスのせいもあってか、警察に届け出ることを頑なに拒否するラナの意見を尊重し、通報しないことにしました。
今回の事件でラナの受けた精神的なショックは相当なもので、家で一人きりになるのを極度に嫌がったり、舞台では次のセリフを言えなくなったりします。
エマッドは、警察に頼らない代わりに自分で犯人を見つけることにしましたが、目を離した隙にトラックがなくなっていました。
そこで、父親が交通局に勤めている生徒に頼んで、車のナンバーの所有者を割り出してもらうことにしました。
白いトラックの所有者がパン屋であることを知ったエマッドは、パン屋に入りマジッドという若者が配達にトラックを使っていることを知ります。
マジッドに無理やり配達を頼んだエマッド。
半壊している前の家に呼び出して待っていると、そこに現れたのはマジッドの義父でした。
マジッドは娘と婚礼の買い物のため代わりに来たと語る義父に対して、マジッドの正体を教えるから呼び出せと要求。
しかし義父は娘婿の電話番号を知らないと言い張ります。
どこか怪しいため、この男性が犯人ではないかと疑います。
そこで事件の時に犯人は足の裏を怪我したはずなので、靴下を脱げと要求。
渋って中々脱ごうとしませんでしたが、ついに靴下を脱ぐとやはり足裏を怪我していました。
この初老の男は前の住人の常連客で、住人が変わったと気づいたものの欲望を止められなかったようです。
エマッドは男をクローゼットに閉じ込めラナを呼びます。
そして、今から男の家族を呼ぶから家族の前で告白しろと要求します。
ラナはもう止めて欲しいとエマッドに懇願。
そこで、男性が持病の心臓発作が起きます。
急いで薬を飲ませると、男性は意識を取り戻しました。
しばらくすると、男性の妻、娘、娘婿のマジッドが迎えに来ました。
エマッドはラナの強い希望で家族にはバラしませんでした。
男性は家族と帰っていきましたが、階段でまた心臓発作を起こし、そのまま心肺停止します。
ラナはいたたまれなくなって、自宅を飛び出します。
翌日、舞台上演前のメイク室で鏡に映る自分たちの顔を見つめるラナどエマッドの表情がなんとも言えませんでした。
ココが見どころ
エマッドとラナが出演している舞台はアーサー・ミラーの「セールスマンの死」。
この舞台と劇中での内容がリンクしている部分があって面白いです。
また、エマッドが授業中に観ていた映画は、メールジュイ監督の「牛」。
この映画も隠喩的にエマッドを表現しています。
事前に2つの作品を知ってから鑑賞すると、作品をより理解できます。
まとめ
大切な牛を失った悲しみで気が狂って牛になってしまう映画「牛」の主人公のように、エマッドがだんだん狂ってラナとすれ違っていくところが切なかったです。
人間の暗部の描き方が丁寧な作品でした!
コメントを残す