凛子
ひっきー
ギリシャ悲劇からきている「聖なる鹿殺し」をご紹介します!
作品情報
あらすじ
心臓外科医スティーブンは、美しい妻と健康な二人の子供に恵まれ郊外の豪邸に暮らしていた。
スティーブンには、もう一人、時どき会っている少年マーティンがいた。
マーティンの父はすでに亡くなっており、スティーブンは彼に腕時計をプレゼントしたりと何かと気にかけてやっていた。
しかし、マーティンを家に招き入れ家族に紹介したときから、奇妙なことが起こり始める。
子供たちは突然歩けなくなり、這って移動するようになる。
家族に一体何が起こったのか?そしてスティーブンはついに容赦ない究極の選択を迫られる・・・。
(出典:http://www.finefilms.co.jp/deer/)
キャスト・監督
コリン・ファレル(スティーブン)
1976年5月31日生れ。アイルランド出身。
ジョエル・シューマカー監督に見いだされ『タイガーランド』でハリウッドデビュー。
同監督の『フォーン・ブース』で電話ボックスで身動きできなくなる男を演じ、彼の代表作となる。
スピルバーグ監督のSF超大作『マイノリティ・リポート』ではトム・クルーズと共演。『デアデビル』では悪役ブルズアイを演じる。
ニコール・キッドマン(アナ)
1967年6月20日生れ。オーストラリアからハリウッドに進出する。
『デイズ・オブ・サンダー』で共演したトム・クルーズと1990年に結婚。
『誘う女』でゴールデングローブ賞他数々の賞を受賞。
クルーズと3度目の共演作『アイズ・ワイド・シャット』はキューブリック監督の遺作。
ヨルゴス・ランティモス(監督・共同脚本・製作)
1973年生れ、ギリシャのアテネ出身。
初の長編映画『Kinetta(原題)』はトロントとベルリンの映画祭で上映され、批評家から称賛される。
2作目の長編映画『籠の中の乙女』は、2009年・第62回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリを獲得し、世界中の映画祭で数々の賞を受賞し、
ギリシャとして32年ぶりに2011年・第83回米アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされる。
(出典:http://www.finefilms.co.jp/deer/)
ネタバレ感想
この作品もかなりの不気味さで、世界観にのまれます。
印象的な音楽もあり、静けさに来る大音量でこれもまた効果的でした。
なんだか難しい映画のようにも見えますが、実はそうでもなく面白い哲学的なものを受けました。
基になっているのは、「アウリスのイピゲネイア」というギリシャ悲劇。
監督がギリシャ出身なので、そこから得たのではないかと思います。
この内容はあとで詳しく書くことにします。
不気味な雰囲気を放つ少年マーティンは過去に、医師であるスティーブンが手術をして父親を亡くしています。
このときスティーブンは飲酒をしており、医療ミスで亡くなっています。
自分の罪悪感を埋める為に、マーティンに時計を買い与えたり、ご飯をご馳走したりします。
この、罪悪感を埋めるためというところがポイントであり、スティーブンの人間性が見えて来る。
懺悔の意で少しでも何かというわけではないので、逆転したときに全て暴かれます。
マーティンは何も出来ないように見せつつ、じっくりと水面下で復讐に動いていました。
徐々に面倒になるスティーブンはマーティンを避けるようになり、そしてまずはスティーブンの家族に異変が起こる。
ある朝、息子の足に力が入らなくなり、立てなくなる。
何をどう検査しても異常は見当たらない。
息子は入院し、その病院にマーティンが。
話がしたいと誘われ、仕方なくスティーブンはカフェに向かい話し出す。
ここが度肝を抜く衝撃です。
観ているこっちもマーティンの言っている事を理解する事が出来ない。
「息子さんの足はもう良くならないと思う」と。
???何を言っているんだ?もちろんそうなります。
そこで父親の話をはじめ、僕の家庭を崩壊させた責任はとらなければならない。それがバランスをとることだと。
バランスとは1に対して1。
父親に対して、あなたは誰を差し出すのか?
それに背くなら、全員が死んでしまうということを伝えます。
まずは足の麻痺、次に食欲不振、全く口に出来なくなり目から血を流す。
こうなったら数時間後に死に至る。
いわば、これを今からみることになるわけです。
信用しないスティーブンは大好きなドーナツを息子に届けるも、すでに食べられなくなっていました。
無理矢理押しこむ様は狂気です。
次は娘が歩けなくなる、次は私だと妻も精神的に追い込まれる。
やけになったスティーブンはマーティンを地下に監禁し、拷問します。
呪いを解け!どうすればいいんだと。
何をされても変わらないマーティンを見て、無駄だと翌朝解放します。
完全に絶望的。
でも、観ている側からすると自業自得、スティーブンが可哀想という感情にはならず、復讐の仕方がただただ恐怖なのです。
どこまでも支配者でいようとするスティーブンと、支配下にあった家族はだんだんと意思を持ち変わって来る。
最終的に、1人自分の手で殺さなければ終わらないと悟りスティーブンは目隠しをして銃を撃ちます。
その弾は息子に当たり、死亡します。
これも、実はそうなるようになっていたんじゃないかと思ったりもします。
息子が1番に発症したのも、逆転する支配者マーティンに従う様子がなかったためだと思われます。
3人はその後、レストランで食事をしています。
マーティンが現れ、3人は去り、じっとあとを見ています。
これは、自分の存在を知らしめるためなのかと…。
1度では勿体ないと思える作品なので、2度3度、観返すことをオススメします。
ココが見どころ!
「アウリスのイピゲネイア」
ある英雄が狩りに出たとき、女神アルテミスの鹿を射抜いてしまいます。
アルテミスは狩りの女神。
その鹿を射抜き、自分が1番だと豪語したことが原因でアルテミスの怒りをかいます。
この英雄はギリシア軍の王であり、戦いに出なければならないときに風が止み船が出せなくなります。
預言者は、女神の怒りを鎮めるためには娘を捧げるしかないと言われます。
結果、国を守るために娘を犠牲にするという話。
本作でいうと、アルテミスは不気味な少年マーティンであり、王はスティーブン。
これを踏まえてみるとより内容が濃く分かります。
スティーブンは医師としても家族の中でも、自分が1番であり支配者。
それを奪う為にもマーティンは行動に出るのです。
どうやってそんなことが出来たのか?という詳細はなく、それはこの悲劇から来ているからだと思います。
マーティンの存在は人間の域を超えたものになっていたのではないか?
トラウマや父の死。
神なのか悪魔なのか、わからないのも不気味です。
まとめ
じっくりと一人で観ることがオススメです。
映画館じゃなければ、もう1度再生していたと思うぐらい何か魅了される映画。
終始、何とも言えないところに何とも言えないラスト。
深く知るととても面白くなる映画です。
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