往年の名作である、ニュー・シネマ・パラダイスの監督トルナトーレ監督とこの人に間違いはない音楽はエンニオ・モリコーネ!
この2人の巨匠だけでも観る価値ありですが、感動作品とは少し違います。
凛子
ひっきー
めくるめく罠の世界へ。
作品情報
あらすじ
天才的な審美眼を誇る鑑定士バージル・オドマンは、資産家の両親が残した絵画や家具を査定してほしいという依頼を受け、ある屋敷にやってくる。
しかし、依頼人の女性クレアは屋敷内のどこかにある隠し部屋にこもったまま姿を現さない。その場所を突き止めたバージルは我慢できずに部屋をのぞき見し、クレアの美しさに心を奪われる。
さらにバージルは、美術品の中に歴史的発見ともいえる美術品を見つけるが……。
(出典:https://eiga.com/movie/78310/)
キャスト・監督
ジェフリー・ラッシュ(ヴァージル・オールドマン)
1981年に映画デビュー。
1996年に『シャイン』でピアニストのデイヴィッド・ヘルフゴットを演じ、アカデミー主演男優賞を受賞。この時、オーストラリア人で最初の、演技部門におけるオスカー受賞者となった。
2004年に『ライフ・イズ・コメディ! ピーター・セラーズの愛し方』で喜劇俳優ピーター・セラーズを演じ、エミー賞主演男優賞(ミニシリーズ/テレビ映画部門)を受賞。
シルヴィア・フークス(クレア・イベットソン)
14歳の時にエリート・モデル・マネジメントによりスカウトされる。
最初の仕事は『Elle Girl』のカバーであり、その後数年間はヨーロッパでモデルとして活動する。
2017年にフークスはSF映画『ブレードランナー 2049』でレプリカントのラヴを演じた。
同年にはリュック・ベッソン製作のアクション映画『ネイビーシールズ ナチスの金塊を奪還せよ!』に出演した。
ジュゼッペ・トルナトーレ(監督・脚本)
16歳の頃から舞台にかかわるようになる。イタリア屈指の名監督であり、『ニュー・シネマ・パラダイス』や『海の上のピアニスト』は世界的に高い評価を得ている。
また、自身が大の映画好きで、イタリア古典映画の復興活動などを精力的に行っている。
ネタバレ感想
どんでん返しが凄く、面白い映画だと聞いていましたが、パッケージなどからは想像出来にくいんじゃないでしょうか?
海外のものはミステリアスで分かるのですが、日本のものはちょっと分かりづらい。
どんでん返しで有名と言えば、ユージュアル・サスペクツやシックス・センスなど、見るからに何かありそうな感じですが、本作はちょっと違い見た目のイメージは「普通の映画」のような。
一人の鑑定士がある女性と出会い…という、ヒューマンドラマ的な。
実はそれだけではなく、かなりレベルの高い、そして深い作品なのです。
主人公ヴァージルは美術品の鑑定士であり、自身が開催するオークションでも生計を立てていた。
このオークションの裏側では、ヴァージルが目をつけた品を友人ビリーと共に安値で落札していました。
これは、転売ではなくヴァージルの趣味であり、コレクションのため。
ヴァージルは人嫌いで、周りにいるのはこのビリーと修理店のロバートだけ。
そんな日々の中、電話である女性から鑑定の依頼が入ります。
ここからヴァージルの人生は一変。
彼女は広場恐怖症で外に出られず会うことは出来ないと拒否しつつも、次第にヴァージルに近づいてきます。
そしてヴァージルも彼女を放っておけなくなり、どんどん惹かれハマっていきます。
全てを観ればあとから分かることがたくさんあり、結果から言うとヴァージルに起こった出来事は全て仕組まれていたのです。
それはどこから始まっていたのか?
それははじめから、この首謀者はなんと友人のビリー。
序盤オークションの流れの中で、ヴァージルがビリーを罵倒するシーンがあります。
ビリーは画家として成功出来なかったからパートナーとして助けているというようなことを。
ここで本当は見えていた。
全ての罠は巧妙で、人間嫌いのヴァージルの中へ入り込むにはどうすればいいのか?
まず、クレアが電話をかけたのはヴァージルの誕生日。
普段は秘書が電話を取り次いでいるため、本来ならこの時点でヴァージル本人と話をすることは難しかったはずです。
「誕生日の最初の電話は幸福を呼ぶ」秘書はそういい、自分自身で電話に出る事をすすめるのです。
そしてこれはもう少し前にさかのぼり、ヴァージルがいつも行くレストランで「迷信を信じている」というくだりがあります。
こうした些細な繋がりやポイントがこの映画の中には散りばめられているのです。
必然と思わせる巧みな仕掛け。
一番近いビリーだからこそ、出来た事なのです。
しかし、それでもクレアと簡単に会おうとはせず、難しい人だということが良く分かる。
これも、だからこそ手の内へ入ってしまうと転がるように落ちてしまう。
クレアとのことを相談する修理屋のロバート。
このロバートもビリーの仲間であり、またロバートの彼女も仲間。
クレアの心を開くため、いつしかヴァージルは一所懸命尽くすように会いに行きますが、どうしてもクレアが見てみたい、自分をどう思っているのか知りたい。
帰ったふりをして、覗いているシーンが2回。
あからさまにヴァージルについて電話で話をすることと、セクシーな姿を見せるように座る。
あれ??何か違うような…
よく観察していると、姿を見せるときは2度目で椅子の配置が変わっています。
これから考えても、覗いていることを知っているのです。
どんどん惹かれるヴァージルの裏で、着々と計画は進んでいました。
そして来る、驚愕のどんでん返し。
ヴァージルが長年かけてコレクションしていた肖像画が全てなくなり、何もない部屋に。
ガランとした部屋に恐怖すら感じます。
ヴァージルとの信頼とも愛情とも言える関係を作ったクレアは部屋へ行っていたり、行動はクレアの手中にありました。
クレアがいたところには、実際に骨董品がたくさんあり、この骨董品も見せる為に用意されていた物だと分かる点がいくつかありますが、中で1枚の絵、母だと言われていたバレリーナの女性の絵。
この絵だけ残され裏にはメッセージが…
「愛と感謝を込めて ビリー」
ここで全ての黒幕はビリーだったと分かります。
衝撃過ぎて、なんとも言えなくなります。
せっかく心を開いたのに酷い!とも思えない気がするのは、ヴァージルのコレクションの手に入れるやり方のせい。
人を欺き、自分のことしか考えていなかったことへの天罰のようにも見えるからでしょう。
そしてラストはヴァージルが一人、レストランで食事をしており、人を待っていると伝えます。
一人で食事をすることが当然だったはずが、いつか来るその人を待つ自分に変わっているのです。
これを切なく辛いととるのか、人を想う気持ちを理解し幸福なのか。
待っている人はクレアだったのか?
そうではないような気もします。
観方によって、考え方、観る方向、何度も観て変わる、気づく、そんな映画です。
ココが見どころ!
クレアのいる家の前にはカフェがあり、入り口付近の窓際には小さな女性がいつも座っています。
彼女は常に「数字」を話しています。
この数字は重要で、数字の意味を知った時、鳥肌ものだと思います。
クレアがいるところ、と何度か書きましたがそれも意味があり、彼女こそ「クレア」なのです。
では誰なのか?それは明かされません。
実はこれも、実際に住んでいるのではないという事が分かるシーンがあり、ヴァージルが予定外にやってきたところ。
これを見ると、いつもは準備をしていたということが分ります。
本物のクレアの行動も良く見ていると分かることがありますよ。
そしてもう一つの見どころは、オートマター。
これこそが全てを繋ぐものであり、全員が仲間であることの証拠。
ビリーは最後にこのオートマターも残して行きますが、これはあえてのこと。
それは、やってやったんだと言っているだけではなく、ヴァージル自身が裏付けることを言っていました。
贋作者は自分の印を残したくなるものだと。
まとめ
一言一言、全てに何かあるんじゃないかと思わせるほど、繋がる線の多さに驚愕です。
序盤に、ビリーを罵倒するシーンがあると書きましたが、実はそのあとのオークションでヴァージルは引退を決め、最後のオークションのあとビリーは言います。
「会えなくなると寂しいよ」
…ん??友人のはずなのにおかしなこと言うなぁ…と、そういえば思ったことをビリーの裏書を見たときに思い出しました。
何気なく観ていても驚くと思いますが、また改めてじっくり2度目を観ると新たな発見で面白いはず。
凛子
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