凛子
ひっきー
2011年公開された園子温監督「冷たい熱帯魚」ご紹介します!
作品情報
あらすじ
2009年1月14日。小さな熱帯魚屋を経営する社本信行とその妻・妙子は、万引で捕まった娘・美津子を引き取りにスーパーへと向かう。
すると、その場に居合わせた店長の知り合いという村田幸雄の取りなしで、美津子は何とか無罪放免に。
村田も熱帯魚屋のオーナーだったが、規模は社本の店とは比べものにならないほど大きなものだった。
人の良さそうな村田は、美津子を自分の店で預かってもいいと提案、継母である妙子との不仲に頭を痛めていた社本は、その申し出を受入れることに。
さらに村田は、高級熱帯魚の繁殖という儲け話にも社本を誘い込む。
口の上手さと押しの強さを前に、いつの間にか村田のペースに呑み込まれてしまう社本だったが…。
(出典:http://www.allcinema.net/)
キャスト・監督
吹越満(社本信行)
1984年7月、劇団WAHAHA本舗に参加する。
ソロパフォーマーとしても活躍し、舞台では下ネタや少し下品でお馬鹿なコントや劇、テレビでは映画『ロボコップ』の一人芝居をする「ロボコップ演芸」やビートたけしのものまねなどで『ボキャブラ天国』などに出演した。
1999年1月にWAHAHA本舗を退団。多くの舞台、映画、テレビドラマに出演するほか、1989年から始めた『フキコシ・ソロ・アクト・ライブ』と題するソロパフォーマンス公演を数年に1本程度のペースで続けている。
でんでん(村田幸雄)
1981年、森田芳光監督の映画『の・ようなもの』で俳優に転身。
1995年、ラサール石井、小宮孝泰らと「星屑の会」を結成。
『星屑の町』シリーズや『ある晴れた日の自衛隊』シリーズなど水谷龍二作・演出の舞台に出演。
園子温(監督・脚本)
1961年愛知県豊川市生まれ。 17歳で詩人デビュー。
「ユリイカ」「現代詩手帖」に続々と詩が掲載され、”ジーパンをはいた朔太郎”と称される。
1986年、8mm映画『俺は園子温だ!』がぴあフィルムフェスティバル入選。翌年、8mm映画『男の花道』でグランプリを受賞。
1990年、ぴあフィルムフェスティバルスカラシップ作品として制作された16mm映画『自転車吐息』は、ベルリン映画祭正式招待のほか、30を越える映画祭で上映。
(出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/)
ネタバレ感想
邦画では珍しい、徹底的にやりきった作品です。
1993年に起こった事件を基に作られています。
実際は熱帯魚ではなく犬のブリーダーをしている夫婦であり、犬を殺処分するために使用する毒薬を使い人間を殺害しました。
毒薬は獣医師から譲り受けたようですが、ブリーダーだからといって受け取れるこれはどうなんだと思うところですが、事実と映画と同じなのは「処理方法」。
「遺体無き殺人」と呼ばれており、映画の中で行われる工程と同じ。
風呂場でバラバラにし、ドラム缶で焼却、川や山林に遺棄しました。
映画同様、この夫婦が関係する人間が失踪すると噂になり、警察も動いていました。
本編では、この辺りからどんどん狂気へのスピードが上がってきます。
それも、一人二人ではなく、出て来る全ての人間がです。
引きずり込まれた社本は限界に達していましたが、遺体の処理を行うため村田夫婦と川へ行き、社本が逃げられないように村田は今ここで自分の妻を抱くよう命じます。
ここが一番狂ってるシーンではないかと思います。
笑いながら脚を広げ受け入れる妻、笑いながら見ている夫、やらざるを得ない社本。
うわぁぁ…なかなか凄いなと思いきや、社本は持っていたペンで村田の妻の首を指します。
何かの線が切れてしまったように、社本は激変。
村田を殺し、これからは俺の女だと村田の妻を従え解体するよう命じます。
これに妻は首から血を大量に流しながら大喜びで、うんうん頷いています。
まさしく「狂気の世界」。
この作品の何がやりきったかと言うと、解体シーンなどもそうではありますが、なんと言ってもラストです。
一片の救いもない、卒倒するようなバッド・エンド。
いつもの山小屋で村田を解体中に村田の妻と争いになり、殺害。
そこへ社本の妻と娘が来ます。
またこの関係性がもともと悪く、今の妻は後妻であり娘は受け入れずグレる。
ボロボロの関係を、私が悪かったと妻が修復しようとします。
ここでようやく…ってそんな展開あるの?!
もちろん修復なんてあるわけないけど、まさか社本が妻を殺すとは想像してなかったのです。
妻を刺した包丁で娘の腕を切り、「人生ってのはな、痛いんだよ」と涙ながらに話します。
その直後、自らの首を切って自殺。
決め台詞でもあり、人生を教える言葉なんだな、なんて思ったら大間違い。
娘に身をもって教えた…はずが、目の前で死んだ父親を見て歓喜します。
「やっと死にやがったな、クソジジイ。起きてみろよ、クソジジイ」と笑い叫びながら、倒れている父を蹴りまくり。
娘からしてみれば、何の魅力も意味もない、ただただ鬱陶しい人間だったのです。
それは作中でもよくわかるシーンがいくつもありますが、まさか最期に全ての本音が本当にそうだったことを社本同様、観客も突き付けられます。
お父さんごめんなさい!やめてー!
と、大半の映画なら言うところですよね。
罵倒して笑って蹴られる、死んでもなお救いのない人生。
ココが見どころ!
「演技合戦」です。
誰が一番凄い、なんてものはなく全員が凄すぎて完全に引き込まれます。
でんでんはこの作品をきっかけとして、俳優業も多くなりました。
その存在感は圧倒的で、類を見ないタイプの役者さんです。
何も言えず地味に大人しく過ごしているところからのキレ具合が圧巻の、吹越満。
ドスのきいたセリフに魅了される、黒沢あすか。
周りを固める俳優も名脇役と呼ばれる人たちだったりで、抜かりない。
狂気的な演技で笑いながら切り刻むシーンは、ただのスプラッターではない。
それもそのはず、ここは事実だからだと思います。
桐野夏生原作の「OUT」も同じく風呂場で解体がありますが、観ながら想像出来る上に、自分でも出来るんじゃないか?誰か近くでしてるかもしれない。
という考えが起こるリアルな怖さがあります。
スプラッター映画は内容が薄い作品も多く、ただそのシーンを楽しむといった感じですが、本作は違います。
そしてこの上なきバッド・エンドを観てください。
まとめ
何故か惹かれて何度も観てしまう中毒性があります。
逆に観られない人は、初回で無理だと思います。
こんな事件が実際にあったんだぁ、という見かたよりも、やはり人間は人の不幸や知らない世界を見てみたくなるものなんだろうと。
凛子
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