凛子
ひっきー
あなたは惑わされない自信がありますか?
作品情報
あらすじ
平和な田舎の村に、得体の知れないよそ者がやってくる。
彼がいつ、そしてなぜこの村に来たのかを誰も知らない。
この男についての謎めいた噂が広がるにつれて、村人が自身の家族を残虐に殺す事件が多発していく。
そして必ず殺人を犯した村人は、濁った眼に湿疹で爛れた肌をして、言葉を発することもできない状態で現場にいるのだ。
事件を担当する村の警官ジョングは、ある日自分の娘に、殺人犯たちと同じ湿疹があることに気付く。
ジョングを救うためによそ者を追い詰めていくが、そのことで村は混乱の渦となっていき、誰も想像できない結末へと走り出すー
(出典:http://kokuson.com/story.html)
キャスト・監督
クァク・ドウォン(ジョング)
1974年生まれ。
「悪いやつら」の、チンピラのように悪質な検事チョ・ボムソク、「弁護人」の歪んだ愛国心と信念を持ったチャ・ドンヨン警官、「タチャ~神の手~」の極悪非道な闇金業者チャン・」ドンシクなど、作品ごとに爆発的な演技で存在感を放った演技派俳優。
國村隼(山の中の男)
1955年生まれ。
映画を中心に多くの作品に出演し、「萌の朱雀」で映画初主演。
圧倒的な存在感で高い評価を得て大作・話題作への出演が続いている。
本作で”得体の知れないよそ者”という作品を支配する重要なキャラクターを演じ、その存在感に韓国の映画ファンも熱狂。
最も有名な日本人俳優の一人となった。
ナ・ホンジン(監督・脚本)
2008年の長編デビュー作「チェイサー」で、大韓民国映画大賞、大鐘賞映画祭など韓国内の映画祭はもちろんのこと、シッチェス・カタロニア国際映画祭、ドーヴィル・アジア映画祭など世界有数の映画祭でも賞を次々と受賞。
(出典:http://kokuson.com/)
ネタバレ感想
韓国映画独特の雰囲気に、おかしな日本人の國村準さんがハマり完璧。
この映画はもうめちゃくちゃ奥が深い。
「なぜ心に疑いを持つのか。私の手や足を見よ。まさに私だ。触れてみよ。この通り肉も骨もある」ルカによる福音書24章37-39節
人間は何故自分でみた物を疑うのか?混乱・混沌・疑惑。
イエスキリストは歴史上最も混乱を与え、疑惑を持たれた人物の中の一人。
そこからのインスピレーションだったようです。
この作品でイエスはこの「よそ者」。
いつの間にかこの天使か悪魔かという話になっていますが、核心は本当にそこなのか?
はじめに幻覚を見る毒キノコが流行っているという話があるのに、人のうわさ話からよそ者の日本人が山で鹿を食べていてその目は真っ赤だった。
などどいう内容が広がります。
それも本当のところはどうなのかわからないのに、噂の怖さ。
よそ者が来てから村はおかしくなったと、全ての責任を押し付けて追い詰めます。
集団心理というのか、ある種のイジメを見ているような気にもなり恐ろしい。
この感覚や視点も、何度か観ると変わる気がします。
一度目はきっと村の人達と同じ感覚、二度目三度目ではこの恐ろしさに気づくはず。
主役であるジョングの娘の様子もどんどん酷くなり、これは悪霊の仕業だと祈祷師を呼びます。
この祈祷師とよそ者との祈祷シーンの迫力には圧倒され、一体何が起こっているのか見るのに必死になります。
よそ者は一体なにに対して祈祷しているのか?
殺されないように対抗しているように見え、実は違う。
そしてゾンビが出て来る!え?!ゾンビ!!
何がなんだかわからないところへ、更に迫って来ます。
「今夜鶏が2度鳴く前にあなたは3度私を知らないと言うだろう」
イエスがペトロに言った言葉。
白い服の女に、「家に悪霊への罠を仕掛けたから、鶏が3回鳴くまで待て」と言われますが、ジョングは何が本当かわからず錯乱し、結局3度目を聞かず家へ戻ってしまいます。
家へ戻ると血みどろの部屋、惨殺されている家族。
家の門にかけられた穂の束は、ジョングがくぐった途端に枯れたので、罠が仕掛けられていたのは本当だったのかもしれない。
そこへ祈祷師がやってきて、写真を撮って出て行く。
全てに驚愕ですが、これもそれも一体何がどうなのか?
そんな同じとき、神父であるイサムはよそ者の正体を知るため一人向かっていました。
「ここから出るかどうかはお前の知るところではない」よそ者は不敵な笑みを受けべながらイサムに次げます。
「私に触れてみろ。幽霊には肉と骨が無いが、お前が見る通り、私には肉も骨もある」洞窟で見つけたその姿は傷だらけの人間であり、手のひらには聖痕が。
どうして心に疑いを持つのか、そう言いながらカメラを持ちイサムを撮り出します。
その姿は徐々に変わり、角が生え鋭い爪に真っ赤な目。
「まさに、私だ」その姿は悪魔そのもの。
このラスト、めちゃくちゃ怖いです。
これは、イサムがイエスだと信じ切ることが出来ず、悪魔の姿になってしまったのか?
それともみたそのまま、はじめから思っていたように悪魔だったのか?
白い服の女が悪魔だったのか?
祈祷師が仕組んだことだったのか?
そもそも悪魔などおらず、全ては毒キノコからの病気だったのか?
これがまさしく混乱・混沌・疑い、惑わされているのです。
人間の意思なんて、もろいものだと痛感します。
ココが見どころ!
監督は脚本も務めていて、被害者の立場にたってみたいという思いから作ったと話しています。
ラストも「あなたは最高の父親でした」という締めくくりと言います。
家族の長として、どれだけの苦労をして努力してきたかずっと見ていたという気持ちになると。
この意図にもかなり驚くのは、正直そんなに冷静に観てはいられないからです。
これは一体なんなのか?悪魔は誰なのか?
まさに混乱したままに終わるのです。
自分の目も答えもわからなくなり、真実も見えないまま。
観る人によって全く違う感覚になります。
もう一つに見どころは祈祷のシーンで、映画館では爆音になり圧倒され呆然でした。
まとめ
観るたびに発見や見かたの変わる、本当に奥の深い作品です。
二度三度観る内に、ふとまた観たくなるループにハマり、そして違う見かたになるとそれはそれでまた確認したくなるのです。
韓国でも700万人にも及ぶ大ヒットを記録する、監督の代表する作品となりました。
過去にはチェイサー、哀しき獣というこれもまた衝撃的な作品を送り出しています。
凛子
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